ゆきて帰りし道で

映画と、児童文学と、絵本 etc.

他ブログから引っ越してきました。 まだ体裁やリンクが不完全です。内部リンク切れしています。

絵本(戦争と平和、人権など)

「つばさをもらったライオン」
クリス・コノヴァー 作/遠藤育枝 訳
ほるぷ出版




何気なく手にとった絵本だけど、これはめっけものです。

表紙は、赤ちゃんライオンを抱いている王さまのライオン。
キュート{/複数ハート/}
「コドモにKISS」のデジカメ(?)のCMのライオンの親子みたい。{/細目猫/}

この子にはなぜか翼がはえているんですね。
王さまは猫の国の王さまで、名前はレオ王。(レオってジャングル大帝みたい。。)

絵がらはとても緻密で、でもただ写実的というんじゃなくて、
中世的な衣装を来た王さまや猫たちが、みていて愉快でかわいい。

王さまのひとつだけの悩み事は、北の国のオットー王の宮殿に、なにやらがあるらしいということ。

王子ライオンはひょんなことから、窓からそよ風にのって出てしまったのです。
つばさの使い方も知らないのに…。


この絵本は、ただ服を着た動物の、かわいい物語じゃありませんでした。
たしかに、何故ライオンである必要があるのか、
翼は、どうしても必要か、
中世的な衣服は?
と考えていったら、必然性はないかもしれない、と感じました。

でもそれはともかく、この本は大切なことを教えています。


「 本は、だれとでもわけあえる宝ものだ。 だから、この本を、おまえの国のともだちみんなに、よんであげなさい。
 そして、本もまた、ともだちなのだということを、おぼえておおき。いずれ、おまえが国をおさめるようになったとき、かしこさとほんものの勇気を、あたえてくれるだろうから。」
(p.30)

平和の大切さを、こんな形で表現することができる。新鮮でした。


よろいを着た、猫(ひょう?)さんの剣の鞘には、薔薇の花がさしてありました。
さり気ない絵が、本をはじめて知った喜びと、知識の大切さと、平和を愛する気持ちを表しているようでした。



そしてこれは、本が好きな人に贈る物語でもあります。

本の見返しページにある、ABC順で並んでいる絵は、
世界の多くのお話を表しています。
Aは
「アンドロクレスとライオン」(ローマ伝説)」(p.32)
Oは
「おばあさんとメンドリ」(北欧民話」)」(p.32)
Xは
「クリスマス」(p.32)
というような具合に。

(知らない話もたくさん。
こんなおはなしがあるのかと、探してひとつひとつ読んでみたくなります)




(ナゾ)
白黒場面の絵の、一番左の格子窓の中の猫が、船にむかって吊り下げているものは、何なのでしょう?

(余談)
王子が眠りについた場面の、ノアの箱舟の本から動物たちがでてくるところ、
掛け布団の四角いパッチワークの模様が、だんだんと畑の風景になって溶け込んでいくようなところ、
デイヴィッド・ウィーズナーの『フリー フォール』だったかな? 思い出した。
(参考:HPの『フリー フォール』の感想




「帆かけ舟、空を行く」
クェンティン・ブレイク 作/柳瀬尚紀 訳
評論社



『みどりの船』のクェンティン・ブレイクです。
最初は、「帆かけ舟」、というので、船のことの絵本かと思って手にとった。

でも、見返しや解説を見たら、この絵本ができたわけが書かれてあった。
ブレイクが、教師たちに持ちかけられたこと。
子どもたちと一緒に本をつくらないか、という試み。

「偏見、環境破壊、児童虐待、戦争といったこと」
という、世界の問題。
それらについての本を子どもたちと一緒に作る、ということでした。

そして、1800人もの子どもたちの協力によってこの絵本が作られたと。
(この本の見返しにはその子どもたちの名前が記されています)
 

イゾベルとニコラスは、おしゃべりをしながら砂浜で壊れた船を見つけます。
組み立て、羽を撃たれたこうのとりを助けたことが、はじまりでした。

「シモーナを助けてくれたんだから、ほかの人たちも助けたらどうだい? この空の上から見てるとさ、助けの必要な人がわんさといるじゃないか」


最初は、シモーナを助けたのに「ほかの人たちも助けたらどうだい」とは何よ、と私は思った。
でもそれは、おごったことだった。(そこには、助けて「あげた」のに、という気持ちがあったと思う。)
ガスはシモーナのそばに、みんなのそばに最後までいたし、
みんなは困っている人をためらわずに舟にのせていく。
(舟は重みで下降していくのに)

疑問点は、一番困っている人一人ずつを乗せていく、ということ。
ほかの人はどうなるのか…?

 
考えさせられる絵本でした。

「たったひとりの戦い」
アナイス・ヴォージュラード 作・絵/平岡 敦 訳
徳間書店



これも、落合恵子さんの「絵本だいすき!」で知りました。

ふたつの国の間の、「どうして始まったのか、だれもおぼえてい」ない長い戦争。


表紙の王子の視線、木に登って枝にすわって、じっと見ている目がインパクトあります。

「兵士たちが、ふたたび戦争を始めるのが見えます。
なんとかしなければ。そう思ったファビアンは、手紙を二通書きました。」


その前の、やはり木に登っている後ろ姿のファビアンの絵も、気になります。


作者のアナイス・ヴォージュラードは1973年生まれということです。
今まで読んできた絵本は、名作といわれたり昔からあるものが多かったけれど、
今度は、若い世代の絵本を読みました。

赤の国、青の国の部屋の色合いなど、デザイン的にも現代的な感じがします。

ファビアンは、どんなふうにして戦争をおわらせたでしょうか?

黄色の国の王が涙を流したところの描写が心に残ります。

「ファビアンが王様だったとき、」とあるけれど、それからもずっと平和が続くことを願います。

「エリカ 奇跡のいのち」
ルース・バンダー・ジー 文/ロベルト・インノチェンティ 絵/柳田邦男 訳
講談社





教えていただいた、インノチェンティ。
はじめて読むインノチェンティです。

クリスマスの絵本で教えてもらったのですが、
こちらの絵本は、重いテーマです。

インノチェンティにこの本があるのを知ったけど、手にとるのはなかなか気がすすまないような思いがしていました。
でも、何を読もうかと思っているときに、目にとまったので、思い切って。

強制収容所におくられる母親が、貨車の窓から赤ちゃんを投げ落とす。
万に一つでも、赤ちゃんが生きのびる可能性のために。
その赤ちゃんだった人から、著者のルース・バンダー・ジーが聞いたことなのです。



絵の、インノチェンティ、独学とありました。
すごいですね。
モノトーンの場面など、写真みたいにもみえる、絵でした。

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