「ゆびぬき小路の秘密」
小風さち 作/小野かおる 画
福音館書店



タイム・ファンタジーの佳編、見つけました!

これ、日本の人の作品なんですけど、
(日本の風土の中でもタイム・ファンタジーはもちろん書けるとは思います。でも)
話の舞台が日本でなく外国(イギリス)で、まるでイギリスのタイム・ファンタジーを読んでるみたいに楽しみました。

とても読みごたえのある分厚さと内容で、
何度も「ここはどういうことだったっけ…?」と読み返したりしながら進みました。

5つのボタンが、どこでどうなったか、わからなくなってきたり、相当、複雑。
よくこんな話の筋を考えついたなあ…と感心します。

ゆびぬき小路の古着屋さんの主人が「マダム・ダンカルフ」
って、なんかガンダルフに名前が似てるな、とか考えたり。
古い言い伝えの言葉…詩のような言葉も興味を引きます。

ロビン・フッドの物語なんかも、
はっきりこうと出てるわけではないけど、どこか絡みながら、話がすすむ。

物語の焦点はボタンと、ボタンの秘密であって、森の住人ではない。
でも、この話の色を言えと言われたら、やはり、かな。
そうして、考えてみると、ロビンの、ノッティンガムの森が広大だったころ…、その森と緑が、あちこちに見え隠れする。
ロビンのような義賊か、リンカーン・グリーンうぐいす緑の服を着た賊(p.244)か、
「緑のケンダル織りの服を着て」(p.365)
狩にでた人たちかもしれない、その姿は…。
長い時代の中、存在していた人たち。そして、まぼろしのいきもの。
 
そして、今、気づきました。
バートラムは、
「緑の指を持っている」(p.102)
と。
(『みどりのゆび』って、本もあります。みどりのゆびとは植物に対して特別な才能を持ってる人、っていうような意味だったと思うんだけど。)
そして、みどりのゆびを持ってるだけじゃなく、
「足の裏に根っこが生えてる」(同p.102)
んですって、バートラムは。グレッグが言っていました。

ここらあたりもなんか、バートラムと緑をつなげる秘密がありそう。
仕立て屋や「ボタン」と、バートラムは出あうべくして出あったのでしょう。
 
 
登場人物の中で、もちろん、主人公のバートラム仕立屋ロザムンド・ウェブスターの印象は強いけれど、
妙に心に残るのは、エイドリアン

エイドリアンが、はしごの上でみた、靴の先がわれた男はいったい誰…?
エイドリアン自身なのか、どうしてエイドリアンはあのあと、はしごも置いて、ホームレスの身になってしまったのか…。

教会でバートラムが見たのは夢? 
バートラム自身が過去の時代を過ごし、彼がエイドリアン自身ではないのか? なんてことも考えました。
でも、エイドリアンのみじめな生活は長かった。
その中には一言で言えぬ思いがあったはずで、まだ少年のバートラムが背負うのには大きすぎる。

自分を待っていたバートラムが、時間の中から抜け出た。
でも、考えたら、これ、ずっとぐるぐるまわってたかもしれない、って思ったら…。ちょっと考えたくないですね。

ひとつ、不思議に思ったこと。
少女だったロザムンドが、見えないはずのバートラムに向かって
「どいて!」(p.228)
と言ったのは…?



参考:タイムものの記事
『思い出のマーニー』


参考:HPの『ロビン・フッドのゆかいな冒険』の感想