「アイウエ王とカキクケ公」
武井武雄 原案/三芳悌吉 文・絵
童心社



むかし、「アイウエ王国」という国があり、
「アイウエ王」が治めていました。
となりの国は「カキクケ公国」

そんなふうに、「あいうえ…」で言葉遊びの要素がある絵本です。

最初は、日本の絵本だし、言葉遊びもなんだか…と感じました。

でも、外国の中世ふう(?)のような世界の絵が目にとまったのと、
三芳さんの「あとがき」で、
「 なお、この絵本の風俗や背景については、ノルマン征服を描いたバイユーの「タペストリーの絵物語」(12~13世紀)および、「ペリ公の絵暦」(14~15世紀)の”ポール・ド・リンデンブルグ”と”ジャン・コローム”を参考にしました。」

とあるのが気になりました。

それは、いったいどんなもの? 気になります。

それはともかく、絵本を読んでみることに。

絵からして、「カキクケ公」はいかにも欲がふかそうな人です。

アイウエ王国のぼうさま、「サシスセ僧」
小鳥に囲まれ、温厚で質素な感じが、好きです。
アッシジの聖フランシスコを思い出します。

カキクケ公国に占領されてしまい、困った人々が集まっている絵では、
ランプの光が下からあたって、みなの顔を照らしています。
ざざっと描いただけのように見える絵なのに、光が表現できるんだな、と思います。

「ヤイユエ夜けいかく」の絵は動きがありますね。

「ハ」とか「マ」とか、それぞれの言葉の事柄を描いたページの上にある、
字を囲う四角い紋章のような小さな絵も工夫されています。
また、「ン」の言葉遊びは、考えられていますね。

その物語の世界を挟んで、最初と最後の絵は、
三芳さんが昔かよった、また「アイウエ王様」の物語に最初に出あったという、「活動写真館」の雰囲気でしょうか、
幕が開いてまた閉じる、その間の劇としての設定になっています。

「アイウエ王様」の話を絵本にしたいと思っていた三芳さんは、
のちにその話は武井武雄さんの童話が元だと知ることになり、
諒承を得て絵本をつくったそうです。

物語部分の内容や絵は外国的なのに、
日本の昔の時代の活動写真館を前後にしているところは、
あとがきを読んでいなかったら、なんだか不思議に思ったところです。

アイウエとかカキクケとか日本語の遊びがあるのに、
外国の雰囲気が味わえた絵本でした。