「すえっこOちゃん」
エディス=ウンネルスタッド 作/ルイス=スロボドキン 画/
石井桃子 訳
フェリシモ出版



『ムッドレのくびかざり』『マツの木の王子』につづき、フェリシモ出版の本から。
訳は石井桃子さんです。

絵のスロボドキンは、名前は聞いたことがあるけれど、
他ではまだ絵を見たことがないように思う。

スウェーデンに住む、ピップ=ラルソン家のきょうだい7人のすえっこのOちゃん
まだ小さいんですよ。五つ。
本当の名前は、オフェリア。だけどただO(オー)ちゃんと呼ばれています。
他のお姉さん、お兄さんも、シェークスピア劇に出てくるという名前、
例えばデズデモーナなんていう名前を持っていますが、普段はデッシと呼ばれてます。
デッシ姉さんはもう十九で、Oちゃんの世話もしてくれます。

Oちゃんが巻き起こす騒動や、普段の生活の中で末っ子の小さい子が味わう気持ちが、
明るいタッチで描かれます。
国や生活、兄弟の数や文化は違っても、木にのぼったOちゃんの気持ちなんか、よくわかりますね。


無邪気で、しかしおそるべし、Oちゃん。
「いやはや!」(p.46)
「Oちゃんにもおそれいった……」(p.47)

リンドキストさんの声が、聞こえてきそうです。

Oちゃんのリボンをたくさん頭につけたラッセ兄さん、好きなアグネータがユーモアがわかってよかったね。
『カルメンシータの歌』を一緒に演奏してくれた先生。
子犬を飼うようになったわけ。
おたふくかぜと、冷たいアイスクリーム。

ほほえましく、どこか懐かしい、エピソードの数かずです。

学校の卒業試験の日に、飾り付けた馬車などで祝うところは、スウェーデンの風習に驚きました。

「訳者あとがき」によりますと、
以前、学習研究社からでていた本の復刻です。
下村隆一さんというかたとの、共訳でした。

下村さんはスウェーデン語から、石井さんは、当時イギリスで出版されていた英訳のものから、邦訳をすすめていたそうですが、下村さんは最後の章を残して、お亡くなりになりました。

石井さんは、最後の章を英訳から
「痛恨の思いで」(p.210)
訳されたそうです。
復刊にあたり、2002年現在、下村さんのご遺族とは連絡が取れていないようでした…。
編集部からは、「ご連絡いただきたい」旨が記されていましたが、どうなったのでしょうか…。


(追記)
奥付の原書の表記を見ると、
原題が「PIP-LARSSONS LILLA O」となっています。
こちらが、スウェーデン語の題名で、
表紙などに「LITTLE O」とあるのは、英訳のほうの題名でしょうか?

「LILLA」って、「小さい」のことでしょうか。
ベスコフの『ちいさな ちいさな おばあちゃん』の原題も、LILLA って入っていました。
(参考:HPの、『ちいさな ちいさな おばあちゃん』の表記