ゆきて帰りし道で

映画と、児童文学と、絵本 etc.

他ブログから引っ越してきました。 まだ体裁やリンクが不完全です。内部リンク切れしています。

ヴァージニア・リー・バートン

雑誌「月刊MOE」 2009年9月号(No.359)
白泉社

特集「「ちいさいおうち」とアメリカ黄金期の絵本」



「ヴァージニア・リー・バートン生誕100周年記念」
ということで、特集です!

絵本『ちいさいおうち』や、
作者バージニア・リー・バートンが暮らした村のことがきれいな写真で載っている、
魅力ある特集でした。

『ヴァージニア・リー・バートン 『ちいさいおうち』の作者の素顔』
の訳者、宮城正枝さんの文も載っていました。
バートンの描くおうちや、スチームショベルたちはみんな女性。
そういうことについても、書かれていました。
えっ、『名馬キャリコ』のキャリコも女の子だったのか…。それは知りませんでした。
(読んでたときは彼女、ってでてたのかもしれないけど、もう忘れてます…。)

『ちいさいおうち』にえがかれた、「her story」という言葉の持つ意味。
考えさせられますね。

バートンが活動した、デザインの「フォリーコーブ・デザイナーズ」のことが載っていたのが良かったです。

バートンの本の紹介のリストでは、『Song of Robin Hood』が載っていたのが嬉しい。
原書、「品切れ」って書いていました。
日本で邦訳されないかなあ…。
これ、バートンがイラストを描いているんですけど、絵がとても緻密で。(『ヴァージニア・リー・バートン 『ちいさいおうち』の作者の素顔』の本で知りました)

その他、バートンのほかに、アメリカ絵本の黄金期を支えた人たちの絵本が載っています。
お、マックロスキーもそうなんですね。

またこちらも参考に読んでみたいです。
この特集見ているだけでも楽しいです。



(追記)
(関連記事:メアリー・ブレア:
「視点・論点」 アーサー・ビナード ”ふしぎの国のアリス”の不思議



「ヴァージニア・リー・バートン  『ちいさいおうち』の作者の素顔」
バーバラ・エルマン/宮城正枝 訳
岩波書店



『名馬キャリコ』『せいめいのれきし』の、バージニア・リー・バートンについて、こんな本があったので、読んでみました。
「『ちいさいおうち』日本語版50年記念」として、翻訳された本のようです。

『ちいさいおうち』も読んでない私だけど、これ、とっても読み応えのある本でした。
バートンの素顔がかいまみれる、素描や写真、家族のこと、デザインの活動や、ほかの人の作品につけた絵についてなどなど、盛りだくさん。

バートンは、ダンスもできるし、家族への愛情や配慮も深く、知人たちとのパーティでも魅力あふれています。また、地域のデザインの活動、そしてもちろん、絵本へ傾ける情熱と粘り強い研究の努力。
どれをとっても、すばらしい人だという感じをうけます。最初は、ちょっとできすぎて、しんどいな…と思う向きも感じつつ読んでいました。
『せいめいのれきし』のラストでも感じたような、未来へ暖かな希望を見ることができる人…。

でも、バージニアにもいろいろあったのです。母との複雑な関係もあったし。

「息子アリスは、母ジニーを「近代女性の模範」と呼ぶ。バートンは二人のやんちゃな(彼の言葉だが)息子を育て,男性優位を信じる男性と結婚し,二つのキャリアを追求した。現在のように時間を節約するための家電製品もない1930年代後半から40年代初めに,しかも職業を持つ女性などほとんどいなかった時代に,である。彼女は,彼の言葉をかりれば「ただただ驚異的」だった。」
(p.122)

ふーむ。バージニアと結婚したジョージ・デメトリアスはギリシア移民で、やはり美術家なんですが、
「家父長意識の強いギリシア男で、妻が稼ぎ手になることに敏感に反応した」
(p.88)
とあります。
もちろん、二人はひかれあっていたんです。才能も認め合ってたでしょう。
(この本を読む限り、男性優位を信じる…などと書かれている箇所以外の文面を読んでいると、そうとは思えないほど、ジョージは理解ありそうだし、パーティもあるし家族も楽しくすばらしく思えました。)
けどバージニアも、ただ特別に恵まれた立場にいたというわけではなかったんですね…。
それなのに、美術や、他の面、家族へのふるまいや人格でも、すばらしい魅力を発揮した。

この本のなかに載っている、フォリーコーブ・デザイナーズという、デザインの活動の中での作品でしょうか? 「時間たちのダンス」という絵というか、リノリウム原版から刷られたもの?が好きです。踊り子たちの絵が連続して輪になり時計のようになっていたと思います。(思い出しながら。)
バージニアの絵って、どこか繰り返しの要素があるんですね。
『ちいさいおうち』を挙げたところの説明に、楕円形が広がっていくことが書かれていました。
ほんとにそうだ。楕円というか、まるい曲線が続いていく。
『せいめいのれきし』でも木の枝とか、続き模様みたいな、そんな感じもしたかな、って思い出しています。
そしてまた、「ブランコの木」というモチーフは、いろいろな作品にあらわれているらしいです。

アン・マルコムソンという人の編の、『ロビンフッドの歌』
古い歌の旋律などが載っている本だろうか? その本の絵をバージニアが描いている。
これ、見たみたい!! とってもすばらしい絵。日本語版はでていないのかなあ。
出してほしい!

『名馬キャリコ』。これは、漫画というものを意識し、研究した、少し実験的な作品として紹介されている。
でもわたしは、自分なりだが、興味あることをここで発見した。

悪漢の名前は、「すごみやスチンカー」。スチンカーとは「臭い奴」という意味らしい。
以前、あれ?と思っていたのは、『指輪物語』でゴクリのことを、「Stinker」ってサムが表現していますよね?
あれ?似てる名前、って思っていました。瀬田さん訳ということもあるし。

そして今回、この本を読んで、このスチンカーは、(バートンの案ではスチンカーだったものの)
はじめはスリンカーと言う名前で出版された(1941年)ということを知りました。
(1950年に書き直した際に、スチンカーに戻して出版された。)
ということで、<スチンカー>は出版の事情とはいえ、<スリンカー>でもあったのです。

面白い。不思議な縁です。
だって、サムは「Slinker and Stinker」でしたっけ?「「こそつき」に「くさいの」」って言っていたんですよね。



(追記)
『ちいさいおうち』読みました


(追記2)
関連記事(参考:『ビュンビュンきしゃをぬく』


(追記3)
関連記事(参考:『雑誌「月刊MOE」2009年9月号 特集「ちいさいおうちとアメリカ黄金期の絵本」』

↑このページのトップヘ