ゆきて帰りし道で

映画と、児童文学と、絵本 etc.

他ブログから引っ越してきました。 まだ体裁やリンクが不完全です。内部リンク切れしています。

嵐の中の子どもたち

劇団四季のこどもミュージカル「嵐の中の子どもたち」

去年の暮れにTVで放送していました。



このミュージカルは、サウスオールの「ヒルズ・エンド」

ヘンリー・フィンターフェルトの「子どもだけの町」を原案にしていると知って、観たかったんです。




まず、「ヒルズ・エンド」を読んでからと思いました。



前半は「ヒルズ・エンド」、後半は「子どもだけの町」をメインにしたような感じかな。



ハミング・バード村は200年前に祖先の人が開拓してつくった村。

開拓記念の日、式典のために、村中がヒンメルの町へ出かけるのだけど、

子どもたちは二手に分かれてしまっている。

<山賊団>はちょっとはずれもの。ボブがひきいている。

ボブは、以前から噂されていた遺跡を発見したと言い、

それにケンがうそを言うなと文句をつける。



大人は、開拓記念の日の意味を良く考えるようにと言い渡し、

歴史の本を置いて、ヒンメルへ行ってしまいます。

残された子どもたちは遺跡をめざしますが…。



リーダー格のケンと、<山賊団>のボブは、

「ヒルズ・エンド」では、ポールとアドリアン、

「子どもだけの町」では、トーマスと血まみれオスカルにあたるのだろう。



女の子のフローラは、「ヒルズ・エンド」でのフランセス、

「子どもだけの町」でのマリアンネにあたるだろうけど、

きれいで優しいお嬢さんふうで、物分りがよく公正で、まるで歌のおねえさんのような爽やかさ。

どちらかというとマリアンネの方の印象かな。「子どもだけの町」はあまり覚えていないのだけど…。



足を痛くして、小屋に残る小さなビッキーは、「ヒルズ・エンド」での太った男の子ブッチ。



二つの原作を混ぜて、うまく作っていますね。


遺跡が、壁画ではなくて、遺跡になっていて、しかもエル・ドラドになっていたのでびっくりしました。




嵐の凄まじさ、混乱の心理は舞台では表しきれませんが、
そのあたりは、「子どもだけの町」の、助け合わねばという色を出してまとめていたように感じました。



ミュージカルは、映画はよく見るけれど、舞台のものはそんなに見ていない。

こどもミュージカルということもあるのか、台詞がとても大きな声ではっきりとゆっくりしているので、最初はびっくりしました。

(直接鑑賞ではなくてTVでということもあるかも。)



ボブが良かったです。歌がうまいし、ダンスも。

ジェロニモの役をしている人も、背が高くてかっこいいなと思いました。

<教授>のキャラクターも好きでした。


「ヒルズ・エンド」


アイバン・サウスオール 作/小野章 訳

評論社





とても良かったです!



劇団四季のこどもミュージカル「嵐の中の子どもたち」の、原案のひとつです。

(次の記事に、「嵐の中の子どもたち」を挙げます。)



もうひとつの原案は、ヘンリー・フィンターフェルトの「子どもだけの町」で、そちらは読みました。

「ヒルズ・エンド」も原案のひとつと知り、よけいに読みたくなりましたが、足が遠のいていました…。

今回、TVで「嵐の中の子どもたち」が放映されると知り、読もうと思い立ちました。



読み応えありました!



登場人物の書き分けというか、それぞれの性格、心理描写がいいです。



ゴッドウイン先生の孤独と、同情への嫌悪と恐怖も理解できます。

兄思いのグッシー、実際家のメージー

活力いっぱいのちびのハーベイ

太って、すこしのろいブッチ。でもブッチ、すごい。かっこいい~~{/!!/}と思ってしまう場面もありました。



話も、すごい大嵐がおそってきて、どうなるのだろう…と思わされます。

でも、本当の戦いは、嵐が去ってから。

すべてが、ほんとうに村のほとんどすべてが破壊されつくされた。

その中に帰ってきて、さまざまな困難に立ち向かわねばなりません。



危険な牡牛の問題、ゴッドウイン先生を探すこと、ブッチが見つかった。

いろんな事が押し寄せる中、ポールは何とかしなければならない自分に、幼かった日への別れを感じたこと。

フランセスは、張り詰めた緊張が爆発してすごい悲鳴をあげたこと。

共感できます。



一番好きなのはアドリアンかな。

空想家で、感情の起伏のあるアドリアン。

彼は二つに引き裂かれている。火花の散るような幸福と、みじめさと。



食べ物はあれだけとるだけで大丈夫なのか、とか。

蜂蜜と汚れでべとべとなのに、レモネードで手を洗うだけでなんとかいけるのか、とか。

ばい菌だらけのひき肉は、消毒液をまくだけで大丈夫なのか、とか。

現実だったら、もっと大変だろうと思うところはある。



でも、ともかく、読み応えのある作品でした。とても好きです。おすすめです。


「子どもだけの町」
ヘンリー・フィンターフェルト 作/大塚勇三 訳/ウィリアム・ハッチンソン 絵
フェリシモ出版



ティンペティルという架空の町。
子どもたちは、わるふざけがすぎていた。
「血まみれオスカル」なんていうあだ名の、おやぶん肌の少年にひきいられた<海賊団>の一味が
子どもたちを仲間に入れ、さわぎはますますひどくなってきていた。

ネコのペーターのしっぽに目覚まし時計がくくりつけられたせいでおこった大騒ぎ。
きれた大人たちは、とうとう、大きな作戦にでた。
翌朝、町から大人がいなくなってしまったのだ!
水も電気も通らない町に残された子どもたちは、いったいどうすればいいのか…?

面白かったです。
かなりぶあついけれど、スピーディに読めた。
中盤、子どもたちの名前が覚えられなくて、割り振られた仕事も複雑になってきて
頭がごちゃごちゃになってきたけれど。

主役のトーマスと眼鏡をかけたマンフレート=<教授>
二人の活躍はめざましく、女の子のマリアンネはかわいらしくさわやかで活発。

今だったら、子どもたちだけで発電所を動かすなんて、とてもできないだろう。
小さな町だからできたとしても、ちょっとそこまでは不自然かなとも思うけれど。

トーマスは、出来すぎる。

海賊団の捕虜をほんものの留置場にとじこめるなんて、やりすぎでは。。。
オスカルへの罰は、ほんとうにきつくおもえた…。
人が人にそういうことをするのは、きついことだ…。
だから最後は一件落着したのことはよかったと思う。

ウィンターフェルトはドイツで生まれた人で、この本は最初はスイスで出版されたそうです。
この邦訳版の絵は、英語版からとったそうです。
この絵はあまりしっくりしていないように感じました。ヨーロッパの香りがしないので…。

ウィンターフェルトの他の作品も読みたいと思っている。


(追記)
(関連記事:ミュージカル「嵐の中の子どもたち」 本「ヒルズ・エンド」

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