「丘の家、夢の家族」
キット・ピアソン 作/本多英明 訳/
徳間書店



ボリュームと読み応えがあり、読み出すと、もう少しもう少しと、止まらなくなります。

深刻なところも多々あるのです。
カナダはバンクーバー
主人公の少女シーオは、9歳。16歳でシーオを産んだ若い母親リーと二人で暮らしています。
生活は苦しく、学校にもなじめず、いつも本を読んで物語の世界に入り込んでいるシーオ。
「どうしていつも、そんなにぼんやりしているのさ? なにを考えてんだい?」(p.16)

意地悪なクラスの子も、意地悪というよりは不思議そうに聞きます。
 
 
本をたくさん読んでいるシーオ。
『砂の妖精』をはじめ、たくさんの児童書の名前がでてきますよ。(参考:HPの『砂の妖精』の感想
読んだものや、読んでみたいなと思いながら少しワクワク。
 

もうすぐバンクーバーオリンピックが始まりますね。

本多英明さんのあとがきを読んでいると、
バンクーバーのみならず、各国の都会でも、ものごいをする親と子の姿はめずらしくないという。ショックでした。

シーオもリーに言われて、通りで踊りの真似事をしてはお金をめぐんでもらう場面があります。
学校でも、シーオだけが貧しいのではありません。クラスには、こざっぱりした格好の子と、シーオに近い境遇の子もいて、でもシーオは、どちらにも心を開かないのです。

そんなとき、シーオには夢のようなことが訪れます。
突然、理想の家族を見つけ、家族の一員として受け入れられるのです。
不思議だ、夢か魔法か、と思いながら、過去のことをふりきりたいシーオ。でも…。

もうひとりの、<本好きだった>少女、その人がどうかかわってくるのか…。
シーオ中心の物語で、もう忘れそうになっている頃に、そのあたりがからんできて。

現実の厳しいドラマと、タイムトラベルではないけれど、それに似た超えて結びつく感覚もあり。
人間ドラマも味わった本でした。