「きつねのルナール」
レオポルド・ショヴォー 編/山脇百合子 訳・絵
福音館書店



12世紀後半からフランスで、何人もの人たちによって書かれたという「狐物語」
ルナールという名前のきつねが主人公で、
悪賢いきつねが起こす騒動や、当時の風習が描かれた、「動物叙事詩」ということです。

悪賢いルナール。
でも愛嬌もあるな、と思っていると…。
狼イザングランの弟、プリモ、なんとかわいそうな…。

それと、ただ、だましたり、食べ物をとったりするだけでなくて、
宗教のこと、でてくるでしょう。
ひやひやしました。そういうこと、していいのかな、って。

でも一番初めに、ルナール狐の数編を書いたのが、
ピエール・ド・サン=クルーという、おそらくキリスト教のお坊さんで、
あとの枝編をかいたのも、お坊さんたちであったろうということで、
それだけ、生活と信仰が密接だったフランス(そして時代)が現れているんだろうと思いました。

また、山脇さんは上智大学卒だそうで、キリスト教のこと、お詳しいのだろうか?と
訳文みて、ときどき思いました。


おんどりの「唄一」(うたいち)(p.38)とか、
からすの「サブロー」(p.50)。
ルナールの家は、「まる穴屋敷」(p.56)。
あれっ、この言葉の感覚は…。{/ひらめき/}
瀬田貞二さんの訳文に似ている。

きわめつけは…。

「考えているひまもあらばこそでした。」(p.61)

という文章、「あらばこそ」って、「名馬キャリコ」のところで書いたです。
あれを思い出して、山脇さん、瀬田さんの影響とか受けてるのかな?って思いました。


おおかみのイザングランがしっぽを無くす、氷の池の顛末。
イザングランは氷でちぎれたわけじゃないけど、こういう話、民話でなかったっけ?
サブローが口からチーズを落とすところ。「イソップ寓話集」にもあったような。

福本直之さんによる、「解説―ルナールと『狐物語』の履歴書」にも、
「物語の原型やモデルが存在する」(p.241)
と書かれてて、イソップ物語も挙がっていました。
この解説、狐物語を理解するのに、とても良い案内になりそうです{/ピカピカ/}