ゆきて帰りし道で

映画と、児童文学と、絵本 etc.

他ブログから引っ越してきました。 まだ体裁やリンクが不完全です。内部リンク切れしています。

猪熊葉子

「王女さまと火をはくりゅう」
イディス・ネズビット 作/猪熊葉子 訳
岩波書店(岩波ようねんぶんこ)



ラジオの「大人のためのイギリス児童文学」を聞いて
ネズビットの『宝探しの子どもたち』を読もうかと思ったんだけど、
まずはこちらにしました。
りゅうがでてくるみたいで、読みたかったし。
訳が猪熊葉子さんですし。

で、もう忘れていたのですが、これ、『ドラゴンがいっぱい!』の本に入っていた話でした。「火をふくドラゴン」という話だと思います。
(参考:HPの『ドラゴンがいっぱい!』の感想

ブタ飼いのエルフィン、という若者がでてくるのですが、
そのエルフィンという名前が気になってたことがあります。エルフみたいだし。
今回読んで、あれ、エルフィンって…、と。

今回のこの本はこの話ひとつだけです。
また訳の雰囲気が違います。

挿絵の影響もあるのでしょうが、こちらを読んでいて、
王女とエルフィンの愛はドラマティックだと思いました。

「熱い、熱い、熱い。でもエルフィンは、がけにつくまでけっして手をはなしませんでした。」(p.58)


りゅうのために海がお湯になって漁師のひげそりの湯になった、とか、ユーモアもあります。
王女さまは豚を守るためとはいえ、最後はちょっとドキっとするほど厳しい命令を出しますね。

「マツの木の王子」
キャロル=ジェイムズ 作/猪熊葉子 訳
フェリシモ出版



先日、フェリシモ出版の『ムッドレのくびかざり』を読んで、
うしろに載っている、他の出版物のリストを見て、この本を知りました。
猪熊葉子さんの訳。
読んでみたく思いました。

マツの木の林がありました。
まわりには、他の木もはえているのですが、
マツのはえているところには、他の木ははえません
マツの美しさはいちばんで、まんなかの林は、マツの木だけがおさめていたからです。
そのまんなかに、マツの王さまの土地があって、マツの王子さまもそこにいます。

そんなある日、たいへんなことが起こります。
マツの間に、しかも王子さまの隣に、シラカバの木がのびてきたのです。

マツの王子とシラカバの少女はお互いにすきになりました。

私は、シラカバの少女が切られてしまったとき、
王子がばったりと倒れるところが、印象にのこりました。

そこから、王子と少女の長い、生涯の旅がはじまりました。

猪熊さんの(?)「解説 原作者キャロル=ジェイムズについて」を読むと、
排他的なマツの王国は、イギリスの
「階級意識を風刺しているようにもおもわれます」(p.167)
とありました。
なるほどと思いました。
また、
「愛と犠牲への賛歌」(p.167)
はアンデルセンにも通じる、と。
そうですね、確かにアンデルセンを思わせる感じもする。

王子と少女は、「愛と犠牲」の後も、さまざまな困難に出会います。

「ふしあわせだったから、こちこちになって、きしんだんだよ。また、すっかり、もとどおりになったね!」(p.156)


盛り上がってクライマックス、の後の人生のほうが長いといってもいいです。

「ほとんどはしあわせにすごした、じぶんたちの一生」(p.161)

と言えて、よかった。


解説で、ジェイムズが尊敬している作家の中に、トールキンがはいっていたのが嬉しかった。

「太陽の戦士」
ローズマリ・サトクリフ/猪熊葉子 訳
岩波少年文庫




再読です。

サトクリフのこの本、サトクリフの中でも、さいしょのほうに読んだ本。
ハードカバーだけだったけど、岩波少年文庫になった。
サトクリフのほかのも、少年文庫になってほしい。

これは、青銅器時代を扱った物語。
最初に読んだときは、あまり好みの時代ではないような気もちだった。
原始的というか、地味なように思えるし…
(でも、なにしろブリテンの歴史がわかっていなかった)
チャールズ・キーピングのさし絵も、あまりかわいくないと思った。

でも、サトクリフの作品を読んできて、またこれに触れてみて、
なかなかいいと思いました。
ようやっと、サトクリフの重厚さ、猪熊さんの訳の特徴、なれてきたというのもあると思う。

チャールズ・キーピングの絵も、なれてきて特徴がつかめてきたかも。
黒ぐろと縁取りしたような絵、人物の群像ふうみたいなところ。

(参考:HPの『夜明けの人びと』の感想

↑このページのトップヘ